
「白黒、おばあさまがご病気で弱っているの。
このパンとぶどう酒を持ってお見舞いに行ってきてちょうだい」
「はーい」

お母さんに言われた白黒は元気に家を飛び出しました。
その日はとても良い天気だったので白黒は足取り軽く道を進みます。
森の道の途中、そろそろ疲れてきて木の切り株に座りひと休みしたとたん、
おなかがぐーっと鳴りました。

カゴの中には丸々とした美味しそうなパンが入ってます。
「ちょっとだけならバレないかな」
とパンをひとつちぎって食べました。
「うま!」
オーガニック小麦粉と天然酵母で作られたパンは
それはそれは美味しく同梱されたエシレバターを塗ると
さらにその味は引き立ち、
「もうちょっとだけ、もうちょっと食っても大丈夫」
を繰り返しているうち、気づくとひとかけらも
残っていませんでした。

お母さんに怒られる、と思った白黒、
一瞬いいわけを考えましたが、覚悟を決めたように
カゴの中のぶどう酒を手に取り、栓をかじって開けました。
現実逃避です。
ピノノワールの芳香性の高さ(以下略)。
ぶどう酒を一気飲みした白黒は
酔い潰れ、真っ赤な顔でぐーぐー寝てしまいました。

その後、一連の流れを見ていたオオカミに助けられ、
家まで送ったもらった白黒は“あほずきんちゃん”と呼ばれて、
からかわれましたとさ。